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個人的な読書感想文
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メディアは戦争にどうかかわってきたか
メディアは戦争にどうかかわってきたか 日露戦争から対テロ戦争まで (朝日選書(778))メディアは戦争にどうかかわってきたか 日露戦争から対テロ戦争まで (朝日選書(778))
(2005/06/10)
木下 和寛

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メディア側からみた戦史

例えば、あなたが誰かとケンカをしたとする。
それでその相手が卑怯な手を使ってあなたをノックダウンさせたとする。
そのケンカに負けたのはあなただ。
しかし、その一部始終を見ていた観客が、その男を卑怯者扱いして糾弾し、そいつを村から追い出したとしたらどうだろう。
最終的な勝利者はあなたなのだ。

というようなアイロニーに満ち満ちた本。

具体的にいうと、戦争について政治家と軍人がいかにマスコミを味方につけようと戦ったかを解説した本。
日露戦争からイラク戦争まで、要点を押さえ、世論の風向きに対する戦いの戦史が描かれている。

チャーチルとゲッベルスの宣伝合戦は、アメリカの立場をどうするかが狙いだった。
やはり、ゲッベルスは多くのナチ幹部がそうだったように、下品で直情的ながら、煽動のメカニズムを設計したという点ですごいなと思った。
PKというプロパガンダ部隊まであったそうだ。

またアメリカがベトナム戦争に負けたのは、国内の反戦運動に負けたという認識が当時の軍人の間ではあるそうだ。
スタッブ・イン・ザ・バック・シンドローム(背後からの一突き症候群)」というそうだ。
朝鮮戦争に比べ、ベトナム戦争では報道に対する規制を緩めた。
そこにTVという巨大化したメディアが乗り込んできたため、ベトコンの現場処刑などの残虐シーンがアメリカのリビングルームに直で流れ、反戦運動が激化したとのことだ。

その経験から、アメリカはパナマ侵攻時は「プール」、湾岸戦争時は「エンベッド(埋め込み)」といった報道機関の巧妙な抱え込み作戦を構築するに至った。

しかし、イラク戦争時にはインターネットがあった。
それに対する対処法はまだ完成してはいないようだ。
FOXがアルジャジーラに勝ったという話はきかない。

と書いていて思ったのだが、改めて日本のメディアは日本的な馴れ合いが激しいなあと思った。海外のメディアは自分の立場を明確にして戦っているのに対し、日本のメディアは周りの顔色を伺って特オチしないようにしているだけだもの。

メディア側からみた戦史書としてお薦め。
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テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌

プレステ3はなぜ失敗したのか?
プレステ3はなぜ失敗したのか? (晋遊舎ブラック新書 002)プレステ3はなぜ失敗したのか? (晋遊舎ブラック新書 002)
(2007/09/10)
多根 清史

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情報の価値はタイミングに左右される。
晋遊舎ブラック新書というのは、ネットでは「常識」だが、マスコミと世間一般では認知されていないネタをまとめたネタが多い新書だ。

この「プレステ3はなぜ失敗したのか?」は2007年後半に、こういう結論を持ってきたところが偉いのであって、内容的には特に目新しいものはない。
つまり、タイトルにインパクトがあったということだ。
インパクトがあったがゆえに、読みもしないで上から視線で切り捨てている人もいたようだ。
情報を取り扱うプロが偏見で感想を終わらせるのは問題だ。


内容としては、資料の積み重ねを元に手堅くまとまっており、「そりゃ違うだろ!」というところもない替りに「へぇーそうだったのかー」というところもない。
世の中には「WiiとXbox360とPS3の中身は同じなんですよ」と堂々と言っていた清水亮という人もいるのだから、後でつっこまれることを恐れずにもっと大胆な予想をしてみてもよかったのではないかと思う。

項目も
「ドリームキャスト敗北の再現か?」
「PS3の助けがなくてもHD-DVDに勝てた?」
「プレステは久多良木氏のものだったのか?」

など後ろに?が付いたものが多く(数えたら14項目そうだった)、中身は別に問題ないんだから、もっと堂々と言い切ってもいいのではないかと思う。
普段、人の揚げ足取りをしてる人間に限ってこういう時臆病になりがちだが、プライドを切り売りするぐらいの根性があってもいいのではないかと思う。

個人的に、少し違うなと感じたのは、PSはわざとアタリショックを起こしたのではなく、単に母数を大きくしたということと、任天堂は確かにえげつないブラフをかましたにせよロムカートリッジを選んだのは読み込み時間への配慮が理由だろうという点ぐらいだろうか。

また、この本の最大の特徴であり優れている点は、PS3の失敗について語っておりながら、一貫して久多良木健・元SCE社長の人格攻撃をしていないという点が挙げられる。
ネットの感情論に靡かない姿勢は評価されていいだろう。

一種の『買ってはいけない』だが、決して中傷ではなくポジティブなものになっている点は評価したい。

ゲーム業界は変化が早く、この本もそろそろ賞味期限が切れかけている。
「昨日」のことを理解するために、今読むことをお薦めする。

テーマ:**おすすめbook!!** - ジャンル:本・雑誌

自由を考える 9.11以降の現代思想
自由を考える―9・11以降の現代思想 (NHKブックス)自由を考える―9・11以降の現代思想 (NHKブックス)
(2003/05/01)
東 浩紀、大澤 真幸 他

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ネット社会における自由の再定義。
東浩紀・大澤真幸「自由を考える 9.11以降の現代思想」
人は自由を求めている一方、秩序を求める。
秩序は管理によってもたらされる。
管理は自由を狭める。
この一連の流れの中で、何かがスルッと入り込んできても誰も気付かないのではないか? という疑問を掘り下げた対談。

住基ネットを批判すると、むしろもっときっちり住其ネットを作れというロジックになる。
ネットの誹謗中傷から弱者を守れといって規制を始めると、結局社会的弱者の声が聴こえなくなる。
パノプティコンのように監視されている不安よりも、現代はむしろ、メールがこない、自分のサイトが1日6hitしかこない等、「見られていないかもしれない不安」(これも原子化した個人だな)といったものが大きい。
・・・といった具合に、ヘビの尻尾のみのような切れ目のない問題が続々と出てくる。
こういった状況に対して、新しい哲学を模索している。

この本のキモはP203この部分に集約される。

たとえば、労働者が自分の労働力を売って対価をもらっている。何が悪いんだと言われたら悪いわけはない。この状況を「疎外」という概念で捉え返すことで、マルクス主義が出てきたわけですよね。それは概念の発明です。
今求められているのも、同じタイプの発明だと思うんです。個人情報を売って代価やサービスをもらう、そのどこがいけないのか。いけなくないんですよ。
ただはっきりしてるのは、にも関わらず、これは何かが間違っているのではないかと、多くの人が不安を抱いているということです。
その感覚を言葉や論理に変えていかなければならない。



新しい枠組みが必要ということだ。
その為には、新しい概念やキーワードなど、確認手段としての言葉が重要になっていくだろう。

P243では、価値観がばらばらになりすぎた民主主義では、投票が意味を持たず、籤引きが有効という話が出ている。
そういえば、小泉も「政治で重要なのはインスピレーションだよ」といっていたなあ。

教養がありすぎて話がまわりくどくなっているところもあるが、(何しろスタートレックのスラッシュ小説や純愛エロゲ、新海誠の『ほしのこえ』まで引用されるのだ)話の内容は刺激的で示唆に富む。
イラク戦争などの国際情勢ネタは余り多くなく、むしろ国内でのほほんとネットしているオタクの皮膚感覚で語られているところが素晴しい。

実際、この「見えない監獄」の問題は昔からあったものだ。
川原由美子の「すくらんぶるゲーム」やTVドラマ「プリズナーNo.6」なども同じ系統のテーマを持っている。
柵が明確ではないから、自由ではある。
とりあえず楽だからその向こうへ脱出する必要はない。
しかし、果たしてそれでいいのだろうか? という話だ。
この本ではネット社会を迎えて、それが現実の世界に可視化されてきたからこそ語られたといえる。

全体として、こういう問題が出てきてます、今まではこういう哲学がこういう批判をしていましたという点で終わっており、作者二人は問題点を浮き彫りにするところで終わっている。
それに対する対処法や姿勢はバチッと示されているわけではないが、読んでいるぶんには面白い。

テーマ:読書感想 - ジャンル:本・雑誌

気になる部分
気になる部分 (白水uブックス)気になる部分 (白水uブックス)
(2006/05)
岸本 佐知子

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上智大学からサントリー宣伝部を経た翻訳家によるエッセイ集。
サントリー宣伝部というと開高健や山口瞳を輩出したところだが、この人の場合異常にスケールの小さいロマンが尻切れトンボか堂々巡りのような状態でチマチマチマチマと続いている。
物事の細かい部分が気になり、そこからやたら妄想が膨らんでいって収拾がつかなくなっていく話ばかりなのだ。
「女は周辺視野が広く、男は遠近感覚に優れている」というが、この人の場合、もう左右に視界がぶれまくっているんじゃないかという感じがした。
ただし、視点の動きの軌跡に自分ルールがあるようなつつましやかなぶれ方である。

「ある人が、くだもの屋さんで20円のリンゴを7こ買おうとしたら、10円たりませんでした。その人はいくら持っていたでしょうか」というような問題があったとすると、私はその”ある人”のことがひどく気の毒になりはじめるのである。この人はもしかして貧乏なのだろうか。家にそれしかお金がなかったのだろうか。



といった調子だ。
シニフェとシニフィアンの間で迷子になっているような感じ。
あるいは、女の子版・吉田戦車とでもいうか。
ノリとしては生活板の「子どものころ信じていたバカなこと」スレに近い。

特に役に立つとか、勉強になるとか、目から鱗が落ちるということはない。
しかし、不条理ながら子供の頃に持っていた不思議な感覚がリアルに描写されている様は、タイムスリップして過去の自分と会話しているような、何ともいえない味わいがある。

ただ、思わずひいてしまったところも何箇所かある。
「カノッサの屈辱」(P110-)のあたりでは、非抑圧的な幼稚園生活の苦痛から、同級生のヌマザワ君を迫害した経緯が淡々と描かれている。
これについて、作者は別に良心の呵責とか反省とかはなさそうだ。
単にこんなこともありました、というエピソードとして流している。
これは頂けない。
あなたはバラエティ番組で泥棒話を堂々と告白したあびる優と変わらないんじゃないですか、という気がする。

一番ひいたのはP30の以下の文章だ。
かなり気持ち悪いが覚悟して読んでもらいたい。

しかし、何といっても一番おそろしいのはゴキブリだ。黒光りするボディがこわい。長い触角がこわい。毛の生えたたくましい脚がこわい。素早い走りがこわい。飛ぶからなおのことこわい。裏返したときのおなかの横縞がこわい。わしづかみにして手の中にゆるく握ったときの、じたばたと手のひらを蹴る感触がこわい。噛むと口いっぱいに広がる、ちょっと苦い味もいやだ。



岸本佐知子は素手でGを握ったり、Gを口に入れて噛んで味わったことがあるのか!?
そっちのほうがよっぽどこわいが。

翻訳家である彼女は当然の如く辞書をよく引く。
その中でどうしても、よく目に止まってしまう単語があるそうだ。(P169)

その単語というのが

・fruit picker(時々ホモ行為をしてみる異性愛の男)
・cockapoo(コッカースパニエルとプードルの雑種)
・penis envy(男根を所有したいという女性の意識的・無意識的欲求)

といったものだ。
岸本佐知子本人は言及していないのだが、とても腐女子っぽい。
斉藤環先生と対談したら、話がはずみそうだ。

斉藤由多加「ハンバーガーを待つ3分間の値段」や佐藤雅彦「プチ哲学」など軽くてポータブルな哲学書が好きな人にはお薦めの本である。
ただし、役に立つとか抱腹絶倒とかいうことは味わえない。
微妙で伝えにくい魅力の本である。

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