処分用感想文
個人的な読書感想文
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グロテスク・下巻
グロテスク〈下〉 (文春文庫)グロテスク〈下〉 (文春文庫)
(2006/09)
桐野 夏生

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東電OL事件をモチーフにした女の業小説

東電OL事件の状況検証から話を進む。

中国の田舎から出てきた貧しい男が、共産党幹部の男妾を経て、日本で殺人をするまでの軌跡を語る。
貧困と欲望に翻弄された人の人生が、水道管に結露した水滴が床にしたたるような無情なトーンで描写される。

後半でOLが自分を売る価値について悩むところは、共感できた。
これは別に売春婦だけの話ではない。社畜も同じだ。
エンジェルバンクでも売春婦を紹介する話があったら面白いのに、と思う。
しかし考えれば考えるほど、売春婦がそんなにグレードの低い商売という気はしない。
単なる接客サービス業だ。

僕も過労で脱水症状になり入院したことが何回かある。
あらゆる人から真面目だ真面目だといわれていたが、まさか体壊すまで働くタイプではないと思っていたのでこれにはビックリした。
労働とは体を売ることなんだとその時初めて実感した。

この小説では2千円で春を売る女が出てくる。
安すぎると思うだろう。
しかし、マクドナルドではスマイルが0円で売られているのだ。
笑顔という欺瞞を売りさばくなんて、因果な商売だと思わないか?
職業には貴賎はないのだ。効率の違いがあるだけである。

単なる職業にアイデンティティを絡めてくるから話がおかしくなってくるのだ。
もっとも、この本のテーマは職業じゃなくてアイデンティティだが。


この本に登場する人は価値観が閉塞しすぎているのではないだろうか?
どうしても自分にこだわり過ぎているように見える。
それが業ってものでしょ、といわれると、そうなんですかとしか言いようがないが。

自分の内面を鍛えようとしないで、他人の外面ばかりみて、ないものねだりをしてるような人しか出てこない。

他人の芝は青く見える。
それは、自分の庭の管理が出来ていないからだ。
制度や既得権にすがって、威張ったり見下したりする。
それは、自分に何が必要で何が不要かを考えない、考えることすら出来ないガキの示威行為だ。

解説には、「読後には爽快感が・・・」とか書いてあったが、どうやったらこの話で爽快になれるのだろうか。
僕にはさっぱりわからない。
女性ではないが、僕が大学生の時にみていたどうしようもない人のことを思い出して気分が悪くなリ続けていた。

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グロテスク・上巻
グロテスク〈上〉 (文春文庫)グロテスク〈上〉 (文春文庫)
(2006/09)
桐野 夏生

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東電OL事件をモチーフにした女の業小説。

東電OL事件をモチーフに、女の業を描いた小説。
付属女子高とその家庭状況を舞台に、ですます調でコンプレックスとも強迫観念ともいえる情念で一冊まるまる埋め尽くされている。

生まれついての娼婦・ユリコというのが出てくる。
このユリコというのは、ハーフの美貌で、とにかく男と交わりたくてしょうがないという女子高生だ。
それに木島という男が、他の客をとってくる営業をはじめ、学内売春婦になったという展開だ。

都合のいい課金システムを得て、天職になったという、梅田望夫の『好きを貫け。それを仕事にしろ』を具現化したような人だ。
アイデンティティがそのまま職業になった人は幸せである。
モチベーションがいつのまにかインセンティブになっていた人は幸せ者である。
こう考えると、売春の何が悪いんだかよくわからない。
宮台真司の言うとおりだ。
売春と無関係なとこでも風紀の乱れてる人も多いし。

今まで売春が悪かったのは、むしろ性以外に売るものがなかった経済状況が悪いのではないか?
望んでいない職業について苦しみ続ける人達はいつの時代にも、どこにでも多数いるものだ。

読んでいて思い出したのは、土田世紀の「編集王」に登場する明治一郎という編集者の話だ。
明治は、雑誌の中でエロ漫画を企画し、徹底して性の商品化を進めていく。
それは大成功を収めるが、ある時、行き過ぎた表現に圧力がかかり撤退を余儀なくされる。
彼の過去には学生時代にいじめを受けたところから、学内の売春組織に巻き込まれ、性とは最も商品価値があるものだということが全ての行動の原点になっている。
そんな男のエピソードがあったのだ。

これは男視点の話だが、「グロテスク」のほうはこれを女視点で描き直しているような印象だ。
性が存在意義の全てだというメッセージがねばりつくような情念を帯びて主張される。

第四章「愛なき世界」を語る“わたし”の性格の悪さに呆れた。
本当にネチネチしていて、根性がいやらしい。
他人の手紙を読んだ上で、人間関係が悪くなるようにアドバイスしたりするのだ。
吉田戦車の「甘えんじゃねぇよ」のみっちゃんのママみたいな人である。
多少環境に不幸があったからといって、ここまで性格が歪むのはどうかと思う。

田中良紹さんによると、政治は女を口説くのに似ているという。
政策を実現させるプロセスは、事前に地道な地ならしをし、支持が高まったタイミングを見計らって実行する。
これは、さりげなくムードを盛り上げ、相手の感情が高まったタイミングを見計らってことを遂げる口説きのテクニックと同じだというわけだ。

「グロテスク」を読む限りでは、逆に女の生き方は常に政治的であるかのようだ。
他の女より上か下か、選ぶか選ばれるか、買うか買われるか。
その力学の追究に全てがかかっているかのようだ。
カオスフレームである。

読んでいてつまらないとか読みづらいということはない。
完成度は高いだろう。
業の深いところに触れられるのは勉強になる。

個人的な記憶として、付属高校は閉じた世界で競争がなくなり、堕落して思考力の落ちた人間を作る傾向が強いということを思い出した。

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